輻射式冷暖房(ふくしゃしきれいだんぼう)は、壁や床、天井、パネルなどの表面温度を上下させることで室内の人や物に直接熱を伝え、冷暖房を行う方式です。
通常のエアコンが対流熱(空気を冷やしたり温めたりする)を利用しているのに対し、輻射式は「熱放射」を通じて人や物をじんわりと冷やし・暖めます。風が直接肌に当たらない、温度ムラが比較的少ない、といった点が大きな特徴です。
エアコンのように強い風を出さないため、ほこりやウイルスの拡散が起こりにくく、運転音も小さめです。
放射熱により、人の体や室内物体が直接的に温度変化するため、足元だけ極端に冷える・暖まらないなどの問題を緩和できます。
空気を激しく動かすエネルギーが少ないぶん、設定温度を低めや高めにしても体感温度で十分快適に感じられるケースがあります。
エアコン単体よりもシステム全体のコストが上乗せされることが多く、導入時の費用負担が大きくなる傾向があります。
どこにパネルを設置するか、ヒートポンプや配管の容量をどうするかなど、事前の熱負荷計算をしっかり行わないと効果が得られない場合があります。
高断熱・高気密の空間ほど輻射式の特性を活かしやすいです。逆に断熱性が低い建物では効果が薄く、思ったほど省エネに寄与しない場合もあります。
ライフサイクルコストとは、建物や設備を導入してから廃棄・更新するまでにかかる総コストのことです。一般的には以下の要素を含みます。
輻射式冷暖房の場合、対流式エアコンと異なる機器構成が含まれるため、導入時の費用が高めになることが多いとされます。一方で、ランニングコストは長期的に見ると抑えられる傾向があり、総合的にどちらがお得になるかは「導入する建物の条件」と「使用年数」によって大きく左右されます。
ここでは、輻射式冷暖房特有のライフサイクルコスト構造を整理します。
輻射式冷暖房が十分な効果を発揮するには、建物全体の断熱性能や気密性能が重要になります。熱が外に逃げにくい、あるいは外の熱が入り込みにくい建物ほど、少ないエネルギーで室内を一定の快適温度に保ちやすくなります。
逆に断熱・気密が弱い建物では、輻射式のメリットである「少ないエネルギーで快適」な運用が生かしにくく、想定した効果が得られない可能性があります。ライフサイクルコスト全体を抑えるには、先に断熱リフォームなどを検討してから輻射式冷暖房を導入するケースもあります。
近年は自治体の補助制度や交付金を活用し、体育館や図書館、学校の体育施設などで輻射式冷暖房の採用が進んでいます。
特に大空間の空調費は莫大になるため、エアコンのみの方式よりパネルを併用するハイブリッド型を導入し、台数自体を削減して建物全体のライフサイクルコストを下げる試みも行われています。
また、無風で音が静かなことから、バドミントンや卓球など風の影響を受ける競技を行う施設にも好評です。災害時の避難所としても、冷暖房が快適に働く空間を確保する意義は大きいです。
条件に合った
輻射式・放射式
冷暖房が見つかる
2022年9月15日現在、「輻射式冷暖房」「放射式冷暖房」で検索して表示された輻射式冷暖房メーカー35社のうち、納入事例数が多い2社(※)をピックアップしました。
※個人住宅への納入事例は除く。