作品を温湿度の変化から守る必要がある美術館や博物館では、放射・輻射式冷暖房と、デシカント空調を併用するといいでしょう。観覧者にとっても快適な環境を作る空調の導入事例と、おすすめの製品をご紹介します。
美術館や博物館では、展示品保護の観点から、室温と湿度を一定に保つ必要があります。来館者がいない時間帯も含めて24時間の温湿度管理を行うため、空調の省エネ性も重視されます。そのため、美術館や博物館においては、床や天井を放射板として用いる放射・輻射式冷暖房と、ペリメーター部から除湿された空気を緩やかに吹出するデシカント空調の併用が適しています。
この方法であれば広い館内の室温を均一に保つことができ、風がほとんど起こらないため、ドラフトで作品を劣化させる懸念もないからです。

製品名
セントラルサーモシステム(冷温水式)
解説
平城宮いざない館は、平城宮跡からの出土品、平城宮全域の復原模型や映像資料などを通して、奈良時代を感じられる施設です。
展示室の空調に採用されたセントラルサーモシステムは、床を放射面とする輻射式冷暖房と、除湿された空気をペリメーター部から緩やかに吹き出すハイブリッド・システム。静粛性に優れているため、静かな館内の雰囲気を損ないません。

製品名
セントラルサーモシステム(冷温水式)
解説
TOTOミュージアムは、衛生陶器製造をはじめとした窯業で発展してきたTOTOの、創立100周年記念事業の一環として設立されました。
建築に当たっては人と環境にやさしい工夫が多く採り入れられ、太陽光発電、ソーラーチムニー、屋上緑化といった環境対策が採られたほか、エントランスホールの空調に省エネ効果が高い床放射冷暖房のセントラルサーモシステムが採用されました。

製品名
セントラルサーモシステム(冷温水式)
解説
インフォメーションやミュージアムショップ、イベントスペースがあるエントランスホールに、床放射式であるセントラルサーモシステムが採用されました。
エントランスホールは、高さ13メートルにもなる博多祇園山笠の飾り山が展示されることもある、かまぼこ型の巨大空間。人がいる高さの室温のみをコントロールする居住域空調が、高い省エネ効果を発揮します。
重要な文化財を守り、次の世代に伝えていくためにも、気候の変化や自然災害に備えて管理方法を徹底していく必要があります。
必ずしも恒温に保つ必要はなく、庫内で作業する場合を想定して空調設備の基本性能として28度以下への冷房が可能な出力を確保することが求められています。温度コントロールを主眼とした制御が基本です。
湿度は年間を通じて恒湿になるよう努める必要があります。相対湿度は50~60%が基本であり、65%以上になってしまうとカビ発生のリスクが一気に高まります。逆に50%未満では乾燥による障害リスクが懸念されるため注意が必要。
収蔵庫内にはデータロガー等を設置し、継続的に温湿度記録を収集する必要があります。庫内の温湿度環境を適宜把握しておき、不具合が発生した場合には原因特定を速やかに行い、より効率の良い温湿度調節や運転時間の設定を行います。
庫内の温湿度環境をモニタリングし、その結果によって必要な温湿度設定と設備の運転時間を設定します。設定は定期的に見直すことで、過剰な空調負荷を減らすと共に、ランニングコストの低減にも繋がります。
庫内の空気を循環させることによって、室内の仕上げ材の自然調湿力を促すことに繋がります。庫内室温度のムラを解消し、カビの発生に対する抑止力も期待できるでしょう。必要に応じてサーキュレーターなどの導入も推奨されています。
空気中の塵埃、酸・アルカリ性等の有害物質を保存施設から排出するため、換気設備が必要不可欠です。機械設備もしくは換気口によって換気を行い、外気の流入による結露が生じないよう、庫内の温度と取り入れる空気の温度差に注意が必要です。
換気口等の外気取り入れ口は、効率良く換気できる点に加え、防火・防犯、外部からの雨水や汚染空気、虫の侵入に配慮した仕様が求められます。
収蔵庫内以外にも、二重壁内や床下スペース、小屋裏も構造や換気方法をふまえて換気を行う必要があります。平等の換気が不要な場所にも、非常時に換気対応が可能な換気口が求められます。
空調設備・換気設備には、外部環境を考慮の上適切なフィルターを設置しましょう。汚染物質除去の専用フィルターを設置すれば、庫内で発生する有毒ガスなどを除去できます。
貴重な美術品の保管のためには、防火・耐震・防犯など…保管品の安全を守れる性能を持った設備が求められます。
保存施設は庫内から出火しない構造を前提とし、外部からの類焼を防御する設備が必要になります。ただし、機械設備や照明設備などによる電気の使用、収蔵庫内に出入りする人の不審火などのリスクもあるため、内部からの出火に備えた火災検知・消化設備の導入が必要です。
点検時など、文化財に危険が及ばない位置への導入が望まれます。
文化財の盗難に備えて、早期に異常を検知することを目的とした防犯設備が不可欠です。例えば監視カメラや空間センサー(赤外線センサー)、マグネットセンサーなどの機械式防犯機器がありますが、それに加えて保存施設の立地環境や文化財の形状、施設の管理、公開状況などを勘案する必要があります。
雨水は庫内の湿気を生む要因の一つです。雨水処理を速やかに行うことが、庫内の環境を保つ上で欠かせません。できるだけ保存施設から離れた位置で雨水を処理できる設備の導入が理想です。
また、近年で増加傾向にある集中豪雨などの天災に対しても備えられるよう、それぞれの立地条件に配慮した計画を立てましょう。
原則として、庫内には無紫外線灯を使用して文化財の直上に位置しないよう設置します。また、ランプが落下・破損してしまう可能性も考慮した上で、防塵ネットなどを証明設備に取り付けます。状況に応じて臨機応変に、部分点灯や照明調整が可能な仕様だと尚良いでしょう。
収蔵庫内や展示ケース内など、文化財が置かれている空間では、漏電・埃だまりなどを起因とする出火が懸念されるため、電源設備の設置は原則不可とされています。掃除や内部での作業の必要からコンセントを使用する場合には、スイッチで電源設備への通電を適宜停止できる仕様にしましょう。
収蔵棚などは、文化財が直接配置される場所であるため、長期間にわたって安全に保管可能であることが求められます。仕様・形状を文化財の特性に沿わせ、地震などによる移動や転倒、落下防止などを考慮する必要があります。空調設備などにも配慮した場所に設置しましょう。
保存活用施設とする場合には、展示ケースなどの展示設備は文化庁が定めた「文化財公開施設の計画に関する指針」に準じた展示設備であることが決められています。展示物の大きさや作業場の安全性、機能性や耐震性を考慮することが不可欠であり、ケース内の温湿度調整も注意が必用です。
※参照元:
環境省:【PDF】文化財(美術工芸品)保存施設、保存活用施設
設置・管理ハンドブック
作品の保護に優れ、省エネ性も高い放射・輻射式冷暖房ですが、建物の構造や条件によって設置できる機種が限られます。 導入を検討する際には、空気式、冷温水式の両方に対応し、適切なアドバイスを行えるメーカーに相談しましょう。
本サイトでは、放射式・輻射式冷暖房の導入空間に適したメーカーを紹介。ぴったりな製品が見つからない…と諦める前に、ぜひ参考にしてみてください。
条件に合った
輻射式・放射式
冷暖房が見つかる

2022年9月15日現在、「輻射式冷暖房」「放射式冷暖房」で検索して表示された輻射式冷暖房メーカー35社のうち、納入事例数が多い2社(※)をピックアップしました。
※個人住宅への納入事例は除く。
