災害時に多くの住民が身を寄せる避難所では、適切な温熱環境の確保が重要な課題です。しかし、避難所として指定されることが多い学校体育館の空調(冷房)設備の設置率は、全国で約2割程度(※)にとどまっており、多くの施設で空調の整備が十分に進んでいない状況にあります。
夏場の避難生活では熱中症、冬場には低体温症のリスクが高まるほか、多数の避難者が密集する環境では感染症の拡大防止も欠かせません。こうした背景を受け、文部科学省では学校体育館への空調整備を推進しており、各自治体での導入を促す取り組みが進んでいます。
災害対策基本法においても避難所の生活環境整備が求められており、空調設備の整備は避難者の健康と安全を守るために不可欠な取り組みとして、全国的に検討が加速しています。
体育館のような天井が高く広い空間を効率よく空調するには、施設の規模や条件に合った方式を選ぶことが大切です。主な選択肢として、EHP(電気式)・GHP(ガス式)・併用型と、輻射式冷暖房(放射式冷暖房)が挙げられます。
各方式にはそれぞれ特徴があります。導入コストだけでなく、停電時の対応や受変電設備の改修要否などを比較し、施設の状況に適した方式を選ぶことが重要です。
| 空調方式 | 特徴・コスト面 | 受変電改修の要否 | 停電時対応 |
|---|---|---|---|
| EHP(電気式) | 機器費や工事費が抑えやすく、導入コストが比較的安価 | 大電力を要するため、改修が必要な場合が多い | 稼働不可(別途発電機が必要となる) |
| GHP(ガス式) | 機器費や工事費によって、導入コストが比較的高め | 不要 | 自立運転機能を有する機器もある |
| 併用型 | 電気とガスを組み合わせた方式 | 機器の台数調整で改修範囲を選択可能 | インフラ停止リスクを抑制できる |
輻射式冷暖房は、床や壁、パネル等からの輻射熱(放射熱)を利用して室温を調整する方式です。風を起こさないため体への負担が少なく、大空間でも温度ムラが生じにくいのが特長です。省エネ性能にも優れていますが、初期費用が比較的高い(※)ことや、空調の立ち上がりに時間を要する点は事前に把握しておく必要があります。
避難所に空調設備を導入する際は、以下の3つのポイントを押さえておくことが重要です。
空調整備にかかる費用負担を軽減する制度として、空調設備整備臨時特例交付金が設けられています。公立小中学校等の屋内運動場が対象で、補助率は1/2、対象工事費は400万~7,000万円です。対象期間は令和6年度から令和15年度までとなっており、避難所の指定を受けていることや断熱性の確保が補助要件となっています。
避難所における空調の整備は、災害時に住民の健康と安全を守るうえで欠かせない取り組みです。補助金制度も活用しながら、施設の特性に合った空調方式の選定や断熱対策を含めた設計を、早い段階から進めていくことをおすすめします。
条件に合った
輻射式・放射式
冷暖房が見つかる

2022年9月15日現在、「輻射式冷暖房」「放射式冷暖房」で検索して表示された輻射式冷暖房メーカー35社のうち、納入事例数が多い2社(※)をピックアップしました。
※個人住宅への納入事例は除く。
