官公庁や自治体が管理する庁舎や公共施設では、近年ますます省エネ化の要請が高まっています。とくに、2025年以降に義務付けの範囲が拡大されると見込まれる建築物省エネ法(省エネ法)や脱炭素社会の実現に向けた国の方針(GX実行会議など)により、大規模施設の設計・運用においてはより高度な省エネルギー性能が求められています。
こうした政策目標に対応するためには、断熱性能の強化や高効率設備の導入だけでなく、夏季・冬季の空調負荷をいかに最適化するかが重要です。ここでは、公共施設の空調における新たな選択肢として、輻射式(放射式)冷暖房による省エネメリットや、官公庁の建物での導入事例・効果を紹介します。
「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(いわゆる建築物省エネ法)」は、大規模建築物に対して省エネ基準への適合義務化などを定めたものです。2021年以降、対象範囲が段階的に拡大され、中規模の官公庁施設や公共性の高い建築物においても省エネ基準適合が求められています。
国は脱炭素社会の実現に向け、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の導入を推進しています。ZEBは以下を組み合わせることで、建物のエネルギー収支を実質ゼロに近づけることを目的としています。
官公庁でも新庁舎や大規模改修の際にZEB ReadyやZEB Orientedの取得を目指すケースが増えており、特に空調負荷の削減が重要視されています。その中で、従来のエアコンに代わる選択肢として、輻射式冷暖房が注目されています。
日本は2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロとするカーボンニュートラルを掲げ、その通過点として2030年度までに2013年度比46%削減を目標としています。この46%削減を実現するため、事務所ビルや商業施設、学校・庁舎などの業務部門には、エネルギー起源CO2を2013年度比51%削減するという全体平均より踏み込んだ役割が課されています。建物の高断熱化や空調・照明の高効率化、ZEB化や太陽光発電などの再エネ導入を通じて、業務部門が削減をリードすることが、日本全体の目標達成に不可欠だと位置付けられています。
日本のエネルギー消費において、住宅・業務などの建築物部門は日本全体のおおよそ3分の1を占めており、その削減はエネルギー・温室効果ガス対策の要となっています。産業部門では省エネ投資や生産プロセスの効率化が進み、エネルギー消費量は長期的に見ると減少傾向にありますが、建築物部門はオフィス・商業施設の床面積増加や生活水準の向上に伴い、減少幅が産業部門に比べて緩やかです。また、1990年比で見ると依然として高い水準にとどまっていることから、建築物の断熱性能向上や設備の高効率化、ZEB・ZEHの普及など、建築物部門での省エネ対策の一層の強化が不可欠とされています。
環境省のZEBロードマップでは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年を目途に「新築される建築物はZEB基準の水準の省エネ性能を確保することを目指す」と位置づけています。その際、まずは国や地方自治体などの公的機関が率先してZEB化に取り組み、自らが整備する庁舎や学校、公共施設等で高い省エネ性能を実現することで、民間部門への普及・波及を促すことが求められています。
輻射式冷暖房は、室内の天井や壁、床などに設置した放熱パネルへ冷水・温水を循環させて空調する方式です。空気を大量に送り込む対流式エアコンとは異なり、放射(輻射)による熱移動を活用して空間を冷暖房します。そのため室内の気流が少なく、静かで温度ムラの少ない空調が実現しやすい点が特徴です。
対流式空調に比べ体感温度が上昇(または冷房時の涼しさが向上)しやすいため、設定温度を1~2℃ほど緩和できます。これにより、ヒートポンプや熱源機の運転負荷が軽減され、エアコンと比べて年間10~20%程度の省エネが実現できるケースも報告されています。
輻射パネルは低温や中温の冷水・温水でも効果を発揮しやすく、高断熱化と組み合わせれば冷暖房負荷全体を抑えられるため、ZEBや省エネ法の適合に貢献しやすくなります。
一般的なエアコンのように、フィルターやダクト内部の定期清掃にかかるコストを低減できます。ハウスダストやカビの飛散を抑え、公共の来訪者にも衛生的な空気環境を提供しやすいのがメリットです。
官公庁施設では執務室や会議室の大規模化が進んでおり、複数のエアコンを使用すると気流や騒音が課題となる場合があります。輻射式冷暖房であれば、無風・低騒音で温度を安定させられるため、多くの職員が長時間快適に過ごせる環境づくりに役立ちます。
公共建築物は建築後も長期間にわたり使用されるため、初期投資をかけても運用期間全体で見れば省エネ効果によるコスト削減が大きくなります。さらに、輻射式冷暖房は部材の劣化が比較的少なく、清掃頻度も少なく済むため、長期の維持管理費を抑えやすいと言えます。
輻射パネルや配管を効率よくレイアウトするには、新築や大規模改修時に建築計画と一体で検討することが重要です。省エネシミュレーション(熱負荷計算)を用いて必要なパネル面積や熱源容量を算出し、結露対策や断熱計画も同時に考慮する必要があります。
省エネ法やGXの推進により、官公庁施設にも高度な省エネルギー対応が求められています。輻射式冷暖房は、空調負荷を削減しつつ快適性と静粛性を実現しやすい有効な選択肢です。今後、断熱強化や再エネ設備との連携を通じて、省エネと快適な空間の両立がさらに進むと期待されます。
条件に合った
輻射式・放射式
冷暖房が見つかる

2022年9月15日現在、「輻射式冷暖房」「放射式冷暖房」で検索して表示された輻射式冷暖房メーカー35社のうち、納入事例数が多い2社(※)をピックアップしました。
※個人住宅への納入事例は除く。
