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輻射式冷暖房導入の意義と稟議書

輻射式冷暖房を導入するにあたり、施設や会社の規模によってまずはその必要性と稟議書の重要性を改めて理解することが大切です。

稟議書が必要な理由

新しい設備を導入する際には、必ずコストが発生し、導入工事のための時間や手間がかかります。それを社内全体で理解し、「投資としてどれだけのリターンが見込めるか」「どのようなデメリットがあるか、それをどうカバーするのか」を明確に示さなければ、導入の決裁は下りません。その際に必要となるのが「稟議書」です。

稟議書の主な目的は以下の2点です。

組織での意思決定を文書化し、責任の所在を明確にするため

稟議書に承認者のサインが入ることで、組織全体で責任を共有する体制が作られます。

提案内容が会社にとって有益であることを論理的に示すため

稟議書は、書面として回覧されるため、誰がいつ読み、どの段階で承認したかが記録に残ります。これにより、後から「なぜ導入したのか?」という疑問が出た際にも、当時の判断基準を確認することができます。

稟議書作成のポイント

優れた提案であっても、稟議書の内容が冗長で難解であれば承認者に読まれにくくなり、決裁までの時間がかかってしまいます。また、説明不足のまま提出すると、承認者がリスクを十分に把握できず、不安から差し戻しを受けることもあります。

スムーズな承認プロセスの進め方

稟議書は単なる形式的な文書ではなく、関係者を説得し、納得してもらうためのものです。そのため、専門用語を並べるのではなく、分かりやすく説得力のあるデータを活用しながら、簡潔にまとめることが重要です。

稟議書の基本構成

ここからは、実際に稟議書を作成するにあたっての構成や書き方のポイントを詳しく説明します。

件名・タイトル

最初に大切なのは、何の稟議書なのかをパッと見て分かる件名・タイトルをつけることです。例として、下記のような件名が良いでしょう。

ただし、タイトルが長すぎると読みづらくなるため、簡潔で明確な表現を心がけます。

稟議の目的(結論を先に書く)

承認者が知りたいのは、「この提案を通すと会社にどんなメリットがあるのか」です。そのため、稟議書の冒頭には「結論」を先に書き、そのうえで「なぜ必要なのか」「どんな効果が見込めるのか」を端的に述べます。

例えば、

こうしたデータを示すことで、承認者が具体的なメリットを理解しやすくなります。

稟議の理由(背景・経緯)

現状の問題点や背景を示し、「輻射式冷暖房がそれらをどう解消するか」を具体的に説明します。

例:

また、リスクを先回りして説明し、「初期工事費が高いが、長期的には費用回収が可能」といった対策も明記します。

稟議書作成時の注意点

技術的な課題である「結露対策」を具体的に明記する

輻射式冷暖房は無風で快適な反面、冷房時にパネル表面が結露するリスクが技術的な課題です。稟議書では、このリスクを認識しつつ、「結露しない仕組み」を具体的に示す必要があります。具体的には、「高性能な除湿システムや全熱交換器との連携」、「露点温度を監視・制御するBEMS(ビルディング・エネルギー管理システム)の導入」など、リスクを回避するための技術的対策を明確にします。これにより、システム導入後の運用上の不安や、カビ・水滴による建物への影響といった意思決定者の懸念を払拭できます。

なお、冷房時は室内空気の露点温度以上にパネル表面温度(=供給冷水温度)を保つ露点追従制御(露点センサーで監視し、一定差で自動昇温/停止)と、外気の前処理除湿(DOAS・デシカント・全熱交換器の活用)を併用することで結露リスクを系統的に抑制できます。

初期投資額を「長期的な投資」として位置づける

輻射式は一般的な空調に比べて初期費用が高額になりやすいため、稟議書では単なる高額な出費ではなく、コスト削減につながる長期的な投資であることを強調すべきです。具体的には、初期費用を明確に提示しつつ、年間光熱費の削減見込み額を過去のデータに基づいて試算し、「初期投資額 ÷ 年間削減額」から算出される投資回収期間(Payback Period)を厳密に記載します。さらに、ZEB補助金など、利用可能な公的補助金を活用した場合の実質負担額を併記することで、財務的なメリットを際立たせ、投資の正当性を示します。

運用・故障時のサポート体制を保証する

全館空調はシステム全体で建物全体を賄うため、故障時の影響が大きくなります。また、特殊なシステムである分、メンテナンスも複雑になりがちです。稟議書では、導入後の安心感を担保するため、長期的なサポート体制について触れるべきです。システムの信頼性を証明する同用途・同規模の導入成功事例を引用するほか、メーカーや施工業者が提供する長期保証の内容(機器本体、冷媒回路、ダクトなど)や、故障時の緊急対応体制(例:24時間受付対応、修理対応のリードタイム)を明記し、運用が中断するリスクに対する対策が万全であることを示します。

決裁との違い

稟議書は、担当者や起案者が組織内で特定の案件(例:購入、計画の実行)の承認を得るために、関係部署や上層部に提出する文書です。これは提案や相談の役割を果たします。

一方、決裁は、その稟議書や提案内容に対して、権限を持つ最終的な責任者(社長や部門長など)が承認・不承認の意思を決定し、実行を許可する行為そのものを指します。稟議は「案を回す行為」で、決裁は「案を確定・執行する行為」であり、両者は段階と役割が異なります。

グリーンファイナンスと資金調達

輻射式冷暖房(放射式冷暖房)のような設備投資は、初期費用が大きくなる傾向にあります。稟議書において投資の正当性を主張するには、単なる「費用の承認」に留まらず、全社的な財務戦略や環境戦略との整合性を示すことが有効です。

近年、脱炭素社会の実現に向けた投資、いわゆる「グリーンファイナンス」が拡大。環境配慮型の設備更新は、条件を満たせば有利な条件での資金調達手段となり得ます。経営層や財務部門に対して、資金調達の観点から設備導入のメリットを提示するための基礎知識を解説します。

グリーンボンド:資金使途を環境効果で説明する

グリーンボンドは、企業や自治体が環境改善効果のある事業(グリーンプロジェクト)に要する資金を調達するために発行する債券です。調達資金の使途が環境目的に限定される点が最大の特徴といえます。国際資本市場協会(ICMA)の原則に基づき、透明性の確保が求められます。※1

稟議書でグリーンボンド活用を視野に入れる場合、設備導入が環境改善に直結することを論理的に記述しなければなりません。具体的には「資金使途(輻射パネル設置や熱源更新など工事範囲)」「環境改善効果(省エネによるCO2削減量)」「測定方法(BEMS等によるモニタリング)」の3点を明確にします。

特に重要となるのが環境改善効果の算定です。輻射式冷暖房の導入により、従来の空調システムと比較してどの程度のエネルギー消費削減が見込めるか、定量的なデータを提示します。国内のガイドラインに沿って整理することで、グリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)との指摘を回避し、客観的な説得力を高められます。※2

※2 参照元:「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2022年版」の公表について|環境省(https://www.env.go.jp/press/press_03798.html)

サステナビリティ・リンク・ローン:KPI/SPTで条件が動く

サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)は、借り手のサステナビリティ目標(SPT)の達成状況に応じて、金利等の融資条件が変動する仕組みです。資金使途が特定されるグリーンボンドとは異なり、一般事業目的での借入も可能ですが、企業全体の野心的な目標設定が求められます。

SLLを活用する場合、稟議書には設備更新が企業のKPI(重要業績評価指標)達成にどう寄与するかを記述します。KPIの例としては、建物全体のエネルギー消費原単位、CO2排出量(Scope1/2)、一次エネルギー削減率などが挙げられます。

輻射式冷暖房の導入を、単体の設備更新ではなく「SPTs(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)達成のための具体的施策」として位置づけます。たとえば「2030年までに事業所CO2排出量を〇%削減する」という全社目標に対し、本導入が不可欠な要素であることを示し、金利優遇等の財務メリットと紐づけます。

金融機関が評価する「脱炭素経営」と空調更新の位置づけ

金融機関は融資判断において、企業の脱炭素経営を「開示」「目標」「実行」の枠組みで評価する傾向にあります。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づくガバナンスやリスク管理の開示は、今や上場企業を中心としたスタンダードとなりつつあります。(TCFD提言は現在も参照可能ですが、TCFDは解散しており、開示の潮流はISSB基準への集約が進んでいます)

空調設備の更新は、脱炭素の「実行」フェーズにおける主要なアクションです。輻射式冷暖房は、快適性を維持しながら一次エネルギー消費を抑制できるため、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化に寄与する技術として説明可能です。

ISO 50001などのエネルギーマネジメントシステムに基づき、削減効果を継続的に測定・改善する体制があることも評価の対象となります。稟議書では、導入後の運用管理によって計画的な数値達成が可能であることを示し、金融機関からの信用獲得に資する案件であることをアピールします。

※ 参照元:Recommendations | Task Force on Climate-Related Financial Disclosures(https://www.fsb-tcfd.org/recommendations/)

稟議書に盛り込む非財務情報の書き方

稟議書における非財務情報の記述は、定性的なメリットを可能な限り定量化、あるいは具体的な価値として言語化することがポイントです。「快適になる」「環境に良い」といった曖昧な表現を避け、ステークホルダーごとにどのような利益があるかを定義します。

「対外信用・ブランド」の面では、脱炭素経営への取り組みが投資家や取引先への訴求材料となることを示します。SBT(Science Based Targets)等の国際認定取得を目指す企業であれば、その達成に向けた具体的な進捗として報告可能です。

「人材・組織」の面では、無風・静音という輻射式の特性を「執務環境の質的向上」と定義します。従業員満足度や採用競争力への寄与、あるいは健康経営の文脈で説明し、離職率低減などの社内指標と関連付けます。テナントビルであれば、環境性能を重視するテナントへの訴求力として不動産価値向上に言及します。

これらの非財務価値や環境効果については、事後的な報告と検証が重要です。グリーンファイナンスの枠組みでは第三者機関による確認が求められる場合もあります。正確なデータ開示を約束することは、グリーンウォッシュのリスクを排除し、稟議の信頼性を担保する基盤となります。

※ 参照元:企業の脱炭素経営への取組状況 | 環境省(https://www.env.go.jp/earth/datsutansokeiei.html)

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(※)編集チームが35社のメーカーを調査した結果(2022年9月調査時点)
放射式・複写式 冷暖房メーカー2選
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